ベトナム・カンボジア旅行記09「タプロム」
タプロムは、ジャヤヴァルマン7世の母の霊を祭った霊廟寺院です。
東西1km南北600mの周壁に囲まれた敷地内には、多くの堂塔と回廊がありますが、全体の約70%はすでに倒壊しています。この遺跡をボロボロにしている犯人のひとりは、榕樹スポアン(ガジュマルの一種)。スポアンが遺跡にからみつき、遺跡をしめつけて破壊していったようなのです。
この遺跡は、スポアンがからみついたまま修復しないことが決まっています。
修復しない理由のひとつは、スポアンがからみついたそのままの姿のほうがかっこいいから。確かにこのようなかたちで植物にからみつかれた遺跡というのは珍しいし、インパクトがありますよね。
で、この遺跡を修復しないもうひとつの理由は、スポアンをとってしまうと遺跡がよけい壊れるから。スポアンの根は、遺跡の石の隙間に侵入し、石を押し広げながらどんどん根を伸ばしています。すなわち、スポアンの根そのものが遺跡の一部になっています。スポアンをとっちゃうと、逆に隙間ができて崩れてしまうそうです。う〜ん、難しいもんだ。
で、このスポアン、遺跡をぼろぼろにしている他に、もうひとつとんでもないことをしています。
スポアンは、実は寄生植物。別の木に種がくっついて、そこから成長してどんどんもとの木を覆い尽くしていきます。そして最後は元の木がどこにあるのかわからないくらいでかくなってしまうのです。
タプロムの遺跡をよく見ると、スポアンの木は地面から生えているのではなく、上からおおいかぶさっているように見えますよね? 実はそのとおりで、他の木に寄生したスポアンが上から下に根を伸ばしてきて遺跡に着地し、遺跡をおおってしまったのだそうです。
タプロムの遺跡、榕樹スポアンとセットで見所のおおいすばらしい遺跡でした。
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